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PBC[Petit]で活動中のLunaのブログです。
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 しばらく、春休みを故郷で家族と過ごしてから、ペティットの街に戻ってまいりました。
 故郷から船をいくつかのりついで、最後の陸路は、その港からペティットへ向かう商隊の一団さんたちと、ご一緒させていただくことになりました。
 そういうひとは、わたし以外にもわりといるもので…旅路をともにするひとたちが、馬や馬車を連ねて、春の風を切っての道をいく――…なかなかに賑やかで、とてもすてきな思い出になりました。
 北の国から来たというおばさんから、娘さんのおさがりの民族衣装のワンピースをいただいたり…、砂漠のむこうからいらしたのだという商隊のおじさまから、らくだのチーズの食べ方を教えていただいて、草原の彼方からいらしたというご夫婦から、めずらしい楽器を聞かせて頂き、みんなで輪になって火の神さまのダンスを踊って……
 そう、気が付いたら、もうすっかりペティットの近くまでたどり着いていたのだと――

 あの、やわらかな紅茶色の髪、妖精が棲む湖のような青い青い瞳…春色のワンピース、そんなネージュお姉さまの姿を見つけるまで、わたしはすっかり失念しておりました。

 お姉さまは、相場のソレユちゃんと一緒に、遠乗りにいらしていたのですって。
 春の光景を、いくつも見つけたのですって…
 すべてが真珠色の森
 太陽が登るときと沈むときに色を変える草原
 ペティットの街には、そのそばに、いくつも春を楽しめる景色があるのだと教えていただきました。

 でも、わたしのいっとうお気に入りのお話は、蟻さんのお話。
 わたしはちっとも気付かなかった…ふと、あしもとに気を留めるだけでも、春を見つけられるのだというお話。
 ちいさなこと、手を伸ばさなくてもとどくささやかなこと…でも、いつも自分のそばにあって、自分をつつんでくれる、たいせつなもの…
 そういうものを、きちんと目にとめて、忘れずに慈しめるネージュお姉さまのことを、ルナはなんだか誇りにおもうのです。

 わたしとお姉さまは、この街で出会っただけの…、そう、まだそんなにお会いしたことも数少ない、もちろん血のつながりだってない、べつべつの存在ですけれど…
 それでも、わたしにとってお姉さまは、ペティットといえば、という代名詞になるくらいに、憧れでたいせつなかたです。

 野原での休憩時間は、そんなに長くも居座れず…――みなさま、目的地がもう目と鼻の先でしたから、気もはやっていたのでしょう。
 わたしも、きっとそうでした。
 早く街についてしまいたい気持ちと、せっかくお会いできたお姉さまとの別れがたい気持ち……

 もしかして、見透かされてしまったでしょうか?
 寂しがるわたしを、思いやってか…、それとも、偶然の再開を記してか…お姉さまがくれたのは、春の花のミサンガ。

 きいろいたんぽぽ、はじめてじっくりと見る、ももいろの花…
 ソレユちゃんの傍で、さやさやと咲いていた花を、お姉さまの白い指が器用に編んで…。

 それを腕に通した瞬間、わたしの胸いっぱいに、あたたかな感情がこみ上げてきました。
 『ありがとう』、『ただいま』、『また、よろしく――』

 お姉さま、ソレユちゃん、そうして―――ペティット!

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