PBC[Petit]で活動中のLunaのブログです。
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先日、ネージュお姉さまからいただいた、花のミサンガ。
わたしの魔力では、水を持たせるのは一週間が限度のようでした。少しずつしおれていく花を、ながめているだけなのは胸が痛くて…
そうだ、だったら、絵にして残しておこうかしら、と、思い立ちました。
でも、描き起こそうとおもって、改めてよく見てみると……そういえば、このももいろの花は、なんという名前かしら…
たんぽぽも、故郷で見るのとは、色合いや花弁の形がちがうようなきがします。
せっかくだったら間違いのないよう、きちんと調べて記録しないと! とおもって、学院の図書館で植物辞典をお借りして、これかしらあれかしら…と調べていました。
めくって、しらべて、描いてみて…ううん、ちがうな。
しらべて、めくりなおして、描き直して…やっぱりちょっと…?
そんなわたしは、きっと、勉強の合間にらくがきをしている学生さんのように見えてしまったでしょう!
…いいえ、じつのところ、課題が終わってはいませんでしたから、それは正解でした。
そんなうしろめたさが心の片隅にあったものだから…、それに、まさかミサンガをくれたお姉さまご本人に見つかるだなんて思っていなくて!
背後から声をかけられて、わたしはついつい、図書館ではお静かに…のこの場所で、椅子の音を大きく立ててしまいました。
こうなると、驚いたのはわたしよりも、今度はお姉さまのほう。
図書館の片隅で、謝罪合戦…。いま考えると、なんだかすこし、おかしいですね。
ちょっとおもしろく感じてしまったわたしは、フォローのつもりで、このあいだお伺いしたイトスギの森での事件…、お姉さまがユベルティお兄さまに脅かされたこと、を、引き合いに出してしまいました。
そうしたら、また、お姉さまがめまいを覚えるほどにショックをうけられて……!
ごめんなさい、ごめんなさい――。でも、ルナは、ネージュお姉さまに驚かされたこと(と、いっても、わたしが勝手に驚いてしまったのですけれど)、嫌な気持ちはしませんでした。むしろ、構ってもらえてうれしかった、ような…。
お姉さまも、ユベルティお兄さまのことはお許しになっているとのことだったし、きっと、そんなふうにおんなじ。お気になさらないで!
――…いえ、でも、やっぱりお話を思い返すと、お兄さまのほうは…すこうし、ね?
わたしだったら、泣いておりました。
周りには、ゾンビらしいゾンビさんもたくさん…ということでしたし。やっぱりちょこっとだけゆるしがたいことのようです。
それから、おしゃべりをしている間に…、わたしもおねえさまも少しずつ落ち着いてきて…
お姉さまが、魔法の初級の本を探していらっしゃるということでしたから、お手伝いさせていただくことにしました。
とはいえ、わたしもまだ図書館では迷うことも多くて、一緒に手探りで本棚を覗いて…。
お姉さまが選ばれたのは、確か、光の魔法の本だったでしょうか。
それと――氷だったでしょうか。雪だったでしょうか。
ご本を読まれる際は、お邪魔になってはいけないとおもって、…それにわたしは課題も終わっていませんでしたし、席を離れたのですけど…
あの本とのめぐりあわせは、お姉さまにとって、良いものだったでしょうか?
そうであったことを願います。
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しばらく、春休みを故郷で家族と過ごしてから、ペティットの街に戻ってまいりました。
故郷から船をいくつかのりついで、最後の陸路は、その港からペティットへ向かう商隊の一団さんたちと、ご一緒させていただくことになりました。
そういうひとは、わたし以外にもわりといるもので…旅路をともにするひとたちが、馬や馬車を連ねて、春の風を切っての道をいく――…なかなかに賑やかで、とてもすてきな思い出になりました。
北の国から来たというおばさんから、娘さんのおさがりの民族衣装のワンピースをいただいたり…、砂漠のむこうからいらしたのだという商隊のおじさまから、らくだのチーズの食べ方を教えていただいて、草原の彼方からいらしたというご夫婦から、めずらしい楽器を聞かせて頂き、みんなで輪になって火の神さまのダンスを踊って……
そう、気が付いたら、もうすっかりペティットの近くまでたどり着いていたのだと――
あの、やわらかな紅茶色の髪、妖精が棲む湖のような青い青い瞳…春色のワンピース、そんなネージュお姉さまの姿を見つけるまで、わたしはすっかり失念しておりました。
お姉さまは、相場のソレユちゃんと一緒に、遠乗りにいらしていたのですって。
春の光景を、いくつも見つけたのですって…
すべてが真珠色の森
太陽が登るときと沈むときに色を変える草原
ペティットの街には、そのそばに、いくつも春を楽しめる景色があるのだと教えていただきました。
でも、わたしのいっとうお気に入りのお話は、蟻さんのお話。
わたしはちっとも気付かなかった…ふと、あしもとに気を留めるだけでも、春を見つけられるのだというお話。
ちいさなこと、手を伸ばさなくてもとどくささやかなこと…でも、いつも自分のそばにあって、自分をつつんでくれる、たいせつなもの…
そういうものを、きちんと目にとめて、忘れずに慈しめるネージュお姉さまのことを、ルナはなんだか誇りにおもうのです。
わたしとお姉さまは、この街で出会っただけの…、そう、まだそんなにお会いしたことも数少ない、もちろん血のつながりだってない、べつべつの存在ですけれど…
それでも、わたしにとってお姉さまは、ペティットといえば、という代名詞になるくらいに、憧れでたいせつなかたです。
野原での休憩時間は、そんなに長くも居座れず…――みなさま、目的地がもう目と鼻の先でしたから、気もはやっていたのでしょう。
わたしも、きっとそうでした。
早く街についてしまいたい気持ちと、せっかくお会いできたお姉さまとの別れがたい気持ち……
もしかして、見透かされてしまったでしょうか?
寂しがるわたしを、思いやってか…、それとも、偶然の再開を記してか…お姉さまがくれたのは、春の花のミサンガ。
きいろいたんぽぽ、はじめてじっくりと見る、ももいろの花…
ソレユちゃんの傍で、さやさやと咲いていた花を、お姉さまの白い指が器用に編んで…。
それを腕に通した瞬間、わたしの胸いっぱいに、あたたかな感情がこみ上げてきました。
『ありがとう』、『ただいま』、『また、よろしく――』
お姉さま、ソレユちゃん、そうして―――ペティット!
雨の日、お気に入りの傘をさして、商店街までお出掛けしました。
お散歩? いいえ…、授業に必要な参考書を買いにいったんです。本当に、そのつもりだったんです。
ただ、どうしても――街中に出てみると、いいえ、雨の日の商店街というのが少し珍しかったからかしら……いつもとは違う表情を見せる景色に、ついつい、足はゆっくりになってしまって…
水滴を浮かべたショーウインドウ、見慣れているはずなのに、ガラスに映る街の光景はきらきらと…まるではじめてあるく街のよう。
ガラスの向こう、並べられた商品も…きらめく水滴を纏って、いつも以上に魅力的にみえてしまいました。まるで、そう、魔法にかけられてしまったみたいに…!
そうして、ふと、おしゃれな雑貨屋さんの前で足を止めてしまったんです。
そうしたら…私と同じく、雨の魔法にかけられていたんでしょうか? 背の高いお兄さまが、おんなじお店を覗いていました。
それと、同じく背の高いお姉さま? あと、うさぎのお耳を生やした獣人のかた。こちらは、背の高いお兄さまのお知り合いのようでした。
雨だれのカーテンに包まれて…、わたしたちは自然と、その雑貨屋さんの軒下で、雨宿りに集まってしまいました。
最初はひとことふたことのご挨拶、でも口を開くと、次から次におしゃべりが沸きでてきて……。これも、雨の魔法なんでしょうか?
そんなわたしの気持ちを神さまが見抜かれたのかしら、本当に魔法使いのような、キャンディーのスティックを手にした女の子が、いつのまにかそこに現れて…!
その場にいるみんなに、ええ、わたしにも…そのキャンディを渡してくださいました。
そのキャンディの甘いことといったら、美味しいことといったら…。天からの甘露、それを煮詰めて固めたら、きっとこんな味になるんだわ、とおもってしまうほどに。
キャンディをくれた女の子、クラリサ――…いいえ、クララちゃん。
この街でまたひとり、お友だちが増えました。そのあと、一緒に雑貨屋さんでショッピングをしたんですよ?
本当に魔法みたいでしょう。でも、今もまだ量の机の引き出しにとっている、キャンディの棒が、あの出会いが夢でなかったと教えてくれています。
クララちゃんが魔法のように現れたあと、背の高いお兄さま――…セシルお兄さまが、どなたかへの贈り物を選ばれていらっしゃるとのことで、みんなで頭を悩ませたり…。
うさぎのお兄さま、ラゼットさんのピンクの傘のお話で盛り上がったり…どなたかからの借り物なんですって。
わたしの、おばあさまから引き継いだピアスを褒めていただいたり……。
フローレンスお姉さまは、見た目からおもったよりずっと楽しいかたで、可愛がっていただいたり……。
ついつい、そんな楽しい時間に背を押されて、でしょうか。流されてしまって、でしょうか…
素敵なお店の、素敵な店主さまに、わたしはついふらふらと着いて行ってしまって、参考書を買うはずだったお金で、ついつい、手帳なんかを買ってしまいました。
その手帳に、確かにお店のアドレスは書き留めたはずだったのに――…
ふしぎなことに、あれからいくら商店街を歩いても、ふたたびとあのお店には辿り着けていないのです。
本当に、夢だったのかしら? 魔法だったのかしら?
いいえ、現実であることの証拠は、たしかに引き出しの中に……。
冬休みも終わって、学院もはじまったので、ペティットに戻ってきました。
無事こちらについたことを、お父さまたちにお伝えしようとおもって、お手紙の準備をしていたのですが…
この街がどんなにすてきな場所かを伝えるのに、わたしの言葉だけではどうしても足りなく感じてしまって…
そうだ、街の景色の絵葉書なんかを同封してはどうかしら、って、思いついたんです。
それで、さっそく、商店街まででてみて、良いお店がないか探していました。
もう、どれくらい歩いたでしょうか…不慣れな街では、なかなか目当てのものを見つけるのは難しくて。
やっと、素敵な絵描きさんを見つけた時には、もう夕方になっていました。
でも…諦めずに探しただけあって、その絵描きさんは、本当にすてきな絵を描かれるかただったんです。似顔絵や肖像画が本来のお仕事のようでしたけれど、ああ、この街のこともきっととてもお好きなんだわ、と見ただけで分かるような丁寧なタッチで風景画も描かれていました。
屋根瓦がいちまいいちまい、すこうしずつ違う色で塗られていて、ほんとうに手の凝っているものだと、わたしは感動してしまいました。
わがままを申し上げたのに、快く絵を売って下さったあの方に、深く感謝を申し上げます。
そうして絵を買い終わったころ…さあ、寮に戻らないと、と、足の向きを変えた瞬間に、わたしったらなんておてんばなことでしょう…目の前を確認するのを怠って、そこにいたかたにぶつかってしまいました。
そうして、さらに恥ずかしことには、なんとそのお方がお知り合いの方…この街に来てすぐのころに出会って良くしていただいた、パケットさんだったんです。
わたしったら、パケットさんにはお会いするたびに恥ずかしいところをお見せしてしまっているような気がします。穴があったら入りたい、とは、このことだわ…!
それでも、そんなわたしにパケットさんは、『いまおてんばをしておけば、今年いっぱいおてんばをしても恥ずかしくないよ』なんて、やさしいお顔で笑いながらおっしゃるんです。
そうして、今年の抱負を、『おてんばしても恥ずかしがらない』にしてはどうか、って…
どうしてわたしにうなずけることでしょう! この街でせっかくお近づきになれた、あこがれのお兄さまのまえでは、いつも以上にレディでいないと、って…レディでいたいって、そう願っているばかりなのに。
わたしは、背伸びのしすぎなのかしら? まだそんなに大人になれてもいないのに、パケットさんの前で恰好つけようとするから、失敗して逆におてんばになってしまうのかしら…
いいえ、むしろ、甘えてしまっているのではないかしら。大人ぶりたいきもちと、ありのままを受け入れてもらいたいわたしのいつもの甘え癖が、せめぎあっておかしなことになってしまって、失敗をくりかえしてしまう…そんな
気が、します。
お仕事中でいらすったようなのに、すっかりご面倒をかけてしまって…そのあとは、お食事まで連れていって下さいました。
初めて行く大人のお店…ルナはしっかり覚えておりますよ? いつか、酒場にも連れて行ってくださるって、そうおっしゃってくださったこと。
お酒は…まだまだ、デビュー前だから、ざんねんでしたけど…
いつか、またいつか…もっと大人になったら、お食事だけでなくお酒も、いつか。
レディとしてのたしなみを覚えてからですから…ずぅっと先のことになってしまうかしら。
憧ればかりが胸になみなみ溜まって、お食事の味なんて…。とてもとても、胸いっぱいになるくらいおいしかった、なんていう感想しかまだ申し上げることができないわたしを、また、やさしく笑ってくださいますか…?